猫-2

日中、自宅は無人になるため、猫は外に出された。
台所の戸を少し開けて餌が食べられるようにしたら、野良猫が入って来て喰ってしまうのでやめた。
帰ったときを察知して、ニャーニャー言いながら顔を見見しながら扉を開けるまで周りを廻るのが可愛かった。
夜は、布団に潜り込んできて、顔をざらざら舐めてくれた。
たまに、トイレを粗相してお仕置きをくらったり、爪砥ぎで壁をぼろぼろにしてくれたり、ドブに落ちたのだろう泥だらけで帰って来て嫌がるのをむりやり風呂に入れたり、した。
メスなので、毎年仔猫を産んだ。残念だが全部秋芳川に流した。
学校の都合で寮にでた後は、世話は母に任せた。
就職後、神戸に住んでいるとき、猫が死んだ、と母から手紙が来た。
井戸のそばでなにかの葉を口に咥えたまま死んでいたそうだ。
そこを読んだとき、涙がぽろぽろ出てきた。
生命有る者の喪失に、切実に向き合ったのは初めてだった。