神戸に住まう

春である。
春といえば、桜である。
桜といえば、小説「細雪」の平安神宮のしだれ桜、の描写である。
独身時代、神戸市東灘区に住んでいた。
ある日、東灘文化センター図書館で何気なく「細雪」を借りた。
うっすら、このあたりのことを題材にした小説、かな・・・という認識だった。
だが、最初の姉妹の会話の導入部から、ぐいぐい引き込まれ、もう一気に読了した。
実は、平安神宮の桜は、当時近くに住んでいながら、行ったことがない。
しかし、その場面のすばらしさは、実際に風にそよぐ桜花枝まで目の前に浮かぶように表現されていたように覚えている。
桜は、ご存じのように、愛でるタイミングが難しいので、同じことなら最上の状態で、と思っていたら、すっかりその機会がなくなってしまった。
もう、今後、機会はないだろう。
細雪」といえば、もうひとつの大きなイベントが、昭和13年の阪神大水害である。
これについては、その痕跡を確認することができた。
住吉川を遡り、白鶴美術館脇の大出水記念碑の側面に当時の最大水位が彫り込まれている。
かなりの位置にあり、ほんまかね。と思うくらいだ。
この住吉谷を更に上流に登ると、五助谷をかすめ東お多福山を経由して、六甲山最高峰(932.1m)に至る。今、国土地理院地図では931mになっている。
当時、米軍の大パラボラアンテナが4基この最高峰に鎮座していて、実際に最高峰に立つことはできなかった。
これは、遠くからでも良く目立ったが、関西を離れている内に1992年返還され、その後撤去されたようだ。
結構大きなアンテナだったが、あれを取って、標高が1.1m値切られたか。
東灘区に住んでいた頃は、夜勤前、夜勤明、休日毎天気良ければ気軽に六甲山に登っていた。
山中、物音がし、気を殺していると、眼下をイノシシが移動して行くのが見えたことがある。
今思うとすごい贅沢な環境だった。