一夜の縁

朝、リビング南面の雨戸を開けると、軒下芝生になにやらこげ茶の丸いクッション状の毛球があった。
良く見ると、猫が丸まって寝ていた姿であった。
そうか、秋口から芝生刈をさぼっていて毛足が長くなっていた場所があったから、寝床にしていたのか。
すぐ、猫も気付き目があった。
近辺では見かけないトラであった。
やおら立ち上がり家屋の影にそそくさと去っていった。
せっかく気持ちよい場所を見つけて休んでいたのに、起こしてしまったようだった。
と、ガラス戸とカーテンを閉めて新聞を読みながらふとまた軒下を見ると、その猫がまたとぼとぼ歩いて戻って元の場所で丸くなるところであった。
驚かさないようにちょっかいを出すのを止めにして、朝食を摂り、出掛けにまたそこを見てみると、もういなかった。
その後、その猫は見かけない。
一夜の宿の朝、不意に起こして悪かったな。