岐阜、鵜飼

国策鉄道会社に勤めていた頃、家人の里である岐阜に出張があった。
立秋を過ぎた丁度今頃、であった。
また、折角の機会であるので会議後に、鵜飼見物を設定した。
他意無く、舅に出張のことを連絡した。
会議自体は問題なく終了し、目玉の鵜飼見物となった。
鵜飼見物の船は、岸辺に繋がれており、まだ明るい裡から料理がどんどん運ばれてきて、さあどんどん食えという。
宴会場は当然外部とつーつーなので、冷房はない。
どうやら、仕出し屋は、食中毒を心配して料理を外部から内部に移動させてしまうことを目論んでいる様子であった。
宴会がたけなわの頃に、来客の連絡があった。
はて、誰であろうと出てみたら、舅がなんと、オールドパーを持参での来訪であった。
婿が出張で来ているのに挨拶がなけらばならん、ということらしい。
当時は、(今でもだが)オールドパーは、プレミアムウイスキーであり、高価である。
舅の配慮に大変恐縮した。
 
鵜飼自体は、暗い中、篝火を舳先に点けた小船が三々五々下流に下るのを見る、というもので、
近傍ではなかったので、鮎がどうのこうのということまでは良く判らず、
風情を楽しむものらしい、
ことがわかった。
 
何年後か今では不明であるが、同じようなことがあったら、また同じようなことをしようと思う。
おそらく、オールドーパーは、そのとき舅の立場の小生の思いを伝えてくれるであろうから・・・