日本人の大地像

―西洋地球説の受容をめぐって-
著:海野 一隆
大修館書店 (2006/12/15 出版)
ISBN: 9784469232400
織田信長は、渡来した宣教師から地球儀を見せられ、大地は丸いことを知っていた。
しかし、その後明治時代まで一般庶民は、そのようなことは知らなかったし、知ってもどうなる訳でもなかったし、知ることを欲してもいなかった。
太陽は東から昇り、西に沈む。夏は日が長いが、冬は短い。
仏教観では、世界の中心には須弥山があり、大地は水上に浮いた状態で存在する・・・という。
発端は、仏教発足の地インドで考えられたローカルな考え方だが、宗教として伝来すると、それ自体が金科玉条となり、他の柔軟な思想は排除されるようになった。
大地が球状だと、反対側の人間は落ちる(どこに?)だろうとか、地球の下側で火が逆さに燃えるはずがないとか、地球が一日一回転しているのであれば樹木や家屋も吹き飛ばされるはずだとか(p219)・・・
日常性感覚から発した、地球・地動説批判が江戸時代後期に出版されている。
現代では、科学教育により、誰でも地動説を学んでそれが「正しい」ことを「知っている」が、日々太陽は東から出て西に落ちるように運行する程度の知識レベルで毎日の暮らしは一向差支えがない。
どれだけ、自分で考え、対処していくか、に生きる価値があるのだろう。