さむらいウィリアム

―三浦按針の生きた時代-
著:ジャイルズ・ミルトン
訳:築地 誠子
原書房 (2005/10/25 出版)
ISBN: 9784562038640
戦国時代末期に日本に漂着し、徳川家康に重用されたイギリス人ウィリアム・アダムスの今まで公開された博物館資料を渉猟し、その頃の時代背景を組み合わせて活写した本。
オランダ人であるヤンヨーステン・ファンローデンスタイン(八重洲は彼の名に由来する)と、家康:大君に謁見した後、世界に対する見識から旗本に取り立てられた三浦按針。
おそらく、Tycoonという英単語は、その頃の征夷大将軍を英語手紙で英国東インド会社に報告したことから、英語に取り込まれて定着したのではないか、と思う。
宣教師が日本に上陸し、ローマンカソリックをヨーロッパ統一宗派として布教しようとしていた矢先であったので、異端派の英国人は危うく殺されるところであった。
西欧が新大陸を植民地化する常套手段は、宣教師・軍人・商人・役人を順次送り込むところに真髄があり、危うく徳川幕府封建社会の建前を崩される一歩手前で禁教して踏みとどまった。
改宗した人々から殉教者が多数出たが、知らなければ平穏に人生を過ごし後世に子孫を残せたものを、後世から見たらお節介な人たちであったと見ることもできる。
三浦按針は、日本人の考え方を理解したが、イギリス商館派遣社員やイギリス艦隊司令官John Sarisらの欧州先進国観は日本文化に対応できなかった、ところまで描写しており、著者の公平な観点が伺える。
組織内部にいるよりも、外部から組織を眺める方がより客観的に把握できることはよく言われていることで、当時日本人が食事時に「棒」を用いることと当時欧州人が手づかみで食事をすることに対し、お互い奇異感をもったところが面白い。
訳はこなれていて読みやすいが、「コーチシナ」は、一般的な「インドシナ」の方が良かったのではないか。