ぼくは上陸している

―進化をめぐる旅の始まりの終わり-
著:スティーヴン・ジェイ・グールド
訳:渡辺 政隆
早川書房 (2011/08/15 出版)
ISBN: 9784152092311/9784152092328
進化生物学の碩学であった著者の最後の書。
原著は、2002年に上梓され、著者は2002年5月20日に60歳で鬼籍に入った。
ラテン語が読解できることから、著者が残した膨大なエッセイは、一次資料から正確に記述されている。
その例は、進化論説明でほとんどの教科書にある「キリンの首が長くなった理由」
ダ・ヴィンチ二枚貝」で述べられている。
上巻にあることだが、歴史に残るものには、最初は理解できなくてもあとからそれが分かる、奥深い内容がある・・・というところがある。
今回、下巻p178で、たまたまそれを先取りしていた箇所があった。
「最近は、もろ北部の人間でさえ、北軍のジョージ・マクレラン将軍よりは南軍の総司令官ロバート・E・リー将軍の方が好きみたいだ」
という箇所である。
先日、「リンカン」を読んでいなければ、この箇所がどういうことか、分からなかった。
 
著者の祖父が米国に上陸したときからの歴史がこの本で述べられている。
取り合えず食いつなぐ初代、生業を見つける二代目、才能を開花させる三代目。
といったところか。
たった(といえば失礼になるか)三代で、功績を上げられる米国のダイナミックさに、脱帽。

2001年9月11日、著者は米国に航空機で帰国途上でその悲劇に出会った。
小さな善行が一万あっても、たった一つの悪行でそれがふいになると著者は言う。
複雑な系は段階を踏むことでしか築けないが、破壊は一瞬ですむ(下巻、p324)
帳尻を合わせるには、さらに重ねる我々の善行が必要である。
 
最後に訳者に一言・・・大変、大変、日本語訳を待っていました。