破壊する創造者

―ウイルスがヒトを進化させた-
著:フランク・ライアン
訳:夏目 大
早川書房 (2011/01/25 出版)
ISBN: 9784152091901
本書には驚いた。
「ウィルス」といえば、電子顕微鏡でしか見えない種類の「悪さをする」モノ。
と思っていた先入観が覆されたからだ。
生物の進化において、宿主である生物に対してウィルスは常に寄生している、という固定概念を持っていた。
ところが、生命が発生した太古から、生物とウィルスはある意味では、「相利共生」している、というのだ。
その一例が、HIVであると著者は言う。
HIVの起源はカメルーンチンパンジーという説が有力であり 、そこから人に感染して世界中に広まっていったと考えられている。」ウィキペディアからの引用
その昔は、チンパンジーHIVとは共生していた。
「共生」であるから、HIVは猿を殺さない。サルの体内でHIVは生き、なんらの害悪を及ぼさない。
それどころか、HIVはサルのために尽くす。
即ち、サルのために、近隣種に感染した場合は、その近隣種を攻撃するしくみが備わっているのだ。
この近隣種とは、「人間」である。
HIVは感情を持たないので、定められたそのメカニズムに沿った動作をする。
そのメカニズムとは、人間が持つ各種の免疫機能を悉く停止させることである。
人類にとっては、恐怖を伴う脅威なのだが、HIVは人間の道徳観を持っていない。
HIVは、どのように感染するのか・・・ということは、数多く公開されている。
この本は、何故、ヒトが感染するのか・・・という基本的な疑問に答えた書籍であった。