富岡製糸場

昨年、機会あって富岡製糸場を訪れた。
有名な世界遺産である。
実際の周囲環境は、その場所に立たないと分からない。
南を流れる鏑川は、結構足元遠く、河岸段丘上に富岡製糸場跡があった。
明治の殖産興業の象徴と感じた。
公開されているのは、一部に留まっている。実は見たかったのは、女工の寄宿舎である。
和田英の「富岡日記」では、士族の子女が最初に工場に入り矜持を保ったふるまいの記述の詳細に驚かされる。
一方、細井和喜蔵の「女工哀史」では、その後全国に工場展開後の状況が「搾取」という言葉を背景に繰り広げられている。
寄宿舎の屋根の線を望遠すると、外部人の不用意な立ち入りはできないと感じた。修理されたらその内部状況を見たい。
この2冊は、一つの固有名詞に対する公の表層的な見地に留まることなく、裏側・下側、更には時間という要素を含めて対応することが肝要と感じるものであった。