サピエンス全史

―文明の構造と人類の幸福-
著:ユヴァル・ノア・ハラリ
訳:柴田 裕之
河出書房新社(2016/09発売)
ISBN:978-4-309-22736-8/978-4-309-22672-9
本書は、歴史本ではあるが、そのジャンルに留まらない内容を含んでいる。
かつて、岸田 秀は、常識として疑われることなく通用している意味、観念を「幻想」と言い切り、「人間は本能の壊れた動物である」と唱えた。
著者は、人類:サピエンスが文明を築いたキーは「虚構」であり、その概念が人同士が協力することを可能にしたと言う。
宗教、国家、国民、企業、法律、人権、平等、貨幣は、「虚構」だという。
その過激的な書き出しに、少々不安を感じたが、進めるに連れて説得されてくる。
歴史的に、農耕社会は狩猟採集社会よりも過酷な生活を人類に強いた、"詐欺"だともいう。
近代に至りヨーロッパが覇権を握ったことの分析を、ジャレド・ダイヤモンドは「銃、病原菌、鉄」でしているが、本書ではまた違った角度:帝国、科学、資本の循環により成し遂げられたと述べる。
古代部族を率いるための手法としての宗教は、世の中のことは自明であり、全て説明できることが必要であった。このことが、やがては自己矛盾につながってくる。
科学の出発点は、世の中のことは解らないことがあることを認めることであった。物体の運動法則を記述したニュートンの方程式は、アインシュタイン相対性理論によって修正された。それでも現在、量子力学との堀は埋められていないし、ひも理論との関係も結べていない。(今後の観察と実験により統一理論がまとめられる・・・ことを望む)
原著は、2011年に著されているが、世界的なベストセラーになったのも頷ける内容だ。
英米亜細亜に属さない著者の生い立ちも、このような観点に至った要素のひとつではなかろうかと、推察する。
TED Talksでも、
Why humans run the world | Yuval Noah Harari
https://www.youtube.com/watch?v=nzj7Wg4DAbs
が公開されている。