江戸時代のロビンソン

―七つの漂流譚-
著:岩尾龍太郎
(新潮文庫)
ISBN: 978-4-10-128621-1
江戸時代には、嵐に遭遇した船乗りたちが数多く存在したと思われる。
ほとんどの場合、不幸な最後を迎え、その記録が後世に残ることは無いのだが、僥倖という名に於いて、ごく少数の者が帰国を果たしている。
「国」に帰る先は、日本国ではなくて何某藩という名称で、彼らの見聞記録は希少である。
本書は、漂流譚研究者である著者が江戸時代に発生したそれぞれの事例を元に内容を分析している。
著者は、幕末期の漂流を無人島に漂着するロビンソン型と異国に漂着するガリバー型に分けている。
無人島:サバイバル
異国:文明の軋りあい
それぞれに、生き抜くために対応・順応・適応した者が上記何某藩に帰着するのだが、ほぼ「生国押し込め」となっている例が多い。
その頃の幕藩体制下の視野狭窄を、現代でもそこここに見聞きするような気がする。