日本渡航記

―フレガート「パルラダ」号より-
著:ゴンチャロフ
訳:井上 満
岩波文庫
初版:1941/04/15(1980年第13刷)
ISBN:9784003260616
米国ペリーの日本来航情報を得たロシアは、プチャーチン提督に対して日本開国を促すよう1853年に船団を長崎に送った。
本書は、ロシア軍艦「パルラダ」号の提督秘書となった作家ゴンチャロフの世界周航記の日本に関係ある部分を抄訳したもの。
ロシアの日本に対する予備知識は、大黒屋光太夫を嚆矢としてゴロウニンの「日本俘虜実記」がその当時既に与えられていた。
経由地香港ではアヘン戦争過、清朝は虐げられていた。
欧米文化を持って未開の地とされた極東を訪れたロシア軍団。
方々に、文明の利器を持つ優越感を漂わせつつ、当時の日本人に対する評価にあたっては鋭い切れを示す。

日本人は立派な内政上の制度を作っている。即ち老中は将軍なしでは何もできず、将軍は老中なしには何もできず、この両者は一緒になっても諸侯がなくては何もできない。こうして彼等の制度は、・・・アメリカ人か、・・・我々かがこれを転覆することができない間は、その人為的基底の上に存続するであろう。p108
これぞ、正しく岸田 秀が「ものぐさ精神分析」で指摘していること、と同一である。