脳のなかの幽霊

著:V・S・ラマチャンドラン/サンドラ・ブレイクスリー
訳:山下 篤子
角川文庫(2011年03月)
ISBN:9784042982111
人間の脳内の各箇所の不具合によって生じる各症例については、オリヴァー・サックスが多くの本を著している。
本書は、インドの脳科学者が、アメリカ人とは少々文化的に違うような角度から切り込んだ、脳の仕組みの本。
科学において重要な仮説・実験・理論化、という観点から“フロイト”について、
自説を証明するための実験をまったく行わなかった。p245
と指摘するが、
人間は死すべき運命にあることを自覚し、死を恐れている。が、宇宙の研究は時間を超越した感覚、更には宇宙という大きく永遠に展開するドラマの一部であることを知れば、限りある命:事実という恐ろしさが軽減される・・・というフロイト流解釈も紹介する。
この指摘には、膝を打った。

脳の側頭葉にてんかんがあると、“宗教的な”意識が生じ、
「私は選ばれた者だ。あななたち劣った存在に神の御業を伝えるのは私の義務でもあり特権でもある」p291
と信じ込むという。案外、約2千年前のあの方々もそのようなことであったのかもしれない。