JFK

―「アメリカの世紀」の新星-
著:フレドリック・ロゲヴァル
訳:高月 園子 
白水社(2023/01)
ISBN:9784560094792/9784560094877

ピュリツァー賞受賞の歴史家が、ジョン・F・ケネディの出自から上院議員になるまでの39年間を濃密に描いた評伝の決定版。

これまでケネディの本格的な伝記を書こうとする試みはほとんどなされなかった(p13)
議員になる以前の年月もまた注目に値する(上p13)
正にそのとおり。現代史に新たな視点を拓いた本と思う。
出自であるアイルランドのジャガイモ凶作による移民をルーツとして、富豪の家系に生まれた次男。
時代は、第一次世界大戦から第二次世界大戦勃発までの世界情勢との関りを交えて、知らなかった内容が満載。
ハーヴァード大学卒業論文で、
ソヴィエトとファシズムの両機構は民間資本主義への攻撃といった面でどんどんお互いに接近している。ともに個人主義、すなわち西側諸国の19世紀の遺産である個人の尊厳や自由といった感覚への敵対勢力を代表している。ともに個人を集合体に従属させている(p285)
とある。当時の学生としては卓越した見解である。

卒業論文は、後に「英国はなぜ眠ったか」というタイトルで出版された。
ヒトラーの台頭を見逃したイギリスの危機について、
気まぐれで戦争嫌いの大衆が当時チェンバレン政府の支持層だったという視点(上p299)、は現在でもどこの国でも見られる普遍的な分析である。

ケネディ家の長男:ジョセフ・パトリック・ケネディ・ジュニアの戦死の状況についても言及されている。(下p62)
火薬満載機に搭乗したが、当の機体は、“接極子パネル”といわれるセーフティピンの不具合の可能性を匂わせている。
接極子パネル???何?それ?

多くの有権者はシンプルな説明と手っ取り早い解決策を好む(下p193)
のは、万国共通である。

下巻の最後は、大統領選に出馬を決めたところで終わる。
早く、続きが、読みたい。

で、初期の極端な残虐性を見せた近代的戦争の戦いの例として、
パッシェンデールやソンヌの戦い(上p298)/ソンヌの雷鳴(下p66)
とあるが。
パッシェンデールやソンムの戦い(上p298)/ソンムの雷鳴(下p66)
だろう。