上─異才/中─原爆/下─贖罪
著:カイ・バード/マーティン・J・シャーウィン
ハヤカワ文庫NF
監訳:山崎 詩郎
訳:河邉 俊彦
ISBN:9784150506056/9784150506063/9784150506070
主人公は、ユダヤ系移民。年少時から差別されたが、学才を発揮するも、周囲との摩擦もあった。その中で、理論物理学者にとしてマンハッタン計画を主導。見事に現場管理者として変身し、トリニティ実験を成功させる。
長じる中で触れた共産主義傾倒の疑惑が、主人公の性格もありスパイ容疑をでっち上げられる。公職を退いた後、アメリカ領ヴァージン諸島にある小さなセントジョン島で余生を過ごした。
ナチスドイツよりも早く核爆弾開発が必要・・・との使命に燃えるも、実戦で日本に使用されてしまった。科学と人情との相克についての一次資料収集に時間を要し、原著は上梓までに25年間を要した力作。
彼が九歳のとき、年上のいとこに次のように言った。上巻p75
「ラテン語で質問してごらん。ギリシャ語で答えるから」・・・天才。
ロスアラモスで原爆開発責任者として務めたのち、トルーマン大統領に即日の核兵器不拡大を訴えたが、却下される。
「大統領は単純な人間で、(中略)ただ本能的で、平凡で、元気だけが良い男」中巻p302
水爆開発に難色を示し、FBIから盗聴され、機密情報アクセス権限を失う。
「ロスアラモスでぼくに払った給料より、ぼくの電話を盗聴する費用の方が多かったんだよ」下巻p354