-生命科学革命と人類の未来-
著:ウォルター・アイザックソン
訳:西村美佐子/野中香方子
文藝春秋(2022/11)
ISBN:9784163916248/9784163916255
伝記著述者として有名な、「ウォルター・アイザックソン物」。
本自体の外装にも、一目で分かるような大きさで著者名が記されている。
原著名は、「ジェニファー・ダウドナ:遺伝編集と人類の未来」なので、日本語訳の“コードブレイカ-”は思い切った意訳だと思う。
主人公は、細菌が持つ免疫の仕組みを基に簡単に遺伝子を操作できるゲノム編集技術「CRISPR-Cas9」を開発し、エマニュエル・シャルパンティエ博士と共に、2020年ノーベル化学賞を受賞した。
米国社会で「生き延びる」ためには、どのようにアグレッシヴでなければならないか・・・がよく分かる。
自然が生き延びる策として得ていた「ゲノム編集機能」を人間が制御できる糸口を見出したことで、
・社会全体として役立つ機能
・個人に相対的な優位性をもたらす強化
の相克が問題点となっている。
著者は、
・ゲノム編集で不完全性を排除することが可能になったことは正しいことか?
・我々の多様性が失われてしまうのか?
・謙虚さや共感は、薄くなってしまわないか?
との問を投げかけている(下巻p320)
本書取材中に、“例の”新型コロナ過が発生し、当該疾病に対する対応は現場取材ならではの内容。
新型コロナと言えば、体外で人工的に合成したmRNAを体内に入れたときの免疫反応に関する新たな発見を基に、新型コロナウイルス感染症のmRNAワクチンの実用化に寄与したとして、
2023年ノーベル生理学・医学賞を受賞した、カタリン・カリコ博士とドリュー・ワイスマン博士
が挙げられるが、この方面としての伝記は二番煎じになるのかな・・・
ダーウィンがビーグル号に乗船したのは、「博物学者になること」(上巻p33)だけでは無く、フィッツロイ船長の無聊を慰み方としての立場もあった。