ヒトの変異

―人体の遺伝的多様性について-
著:アルマン・マリー・ルロワ
訳:築地 誠子、監修:上野 直人
みすず書房 (2006/06/09 出版)
ISBN: 9784622072195
人それぞれには、外見上の差異がある。
特に顔は、それが個人識別の最も有効な手段として万人が認識している。
もう少し広範囲に差異を眺めると、衣服の下にある肉体形状を含めて、その差異は千差万別である。
即ち、人間おいては、「普通」という観念は幻想であり、多かれ少なかれ「ある一定の範囲内」にその差異をプロットして分布している、ということになる。
本書は、上記の「ある一定の範囲内」を遺伝的な多様性変異の観点から述べた本。
奇形を持つ人は、かつて見世物として好奇の眼に曝されていたが、遺伝的に外見上の奇形が発生するメカニズムを解明することで、遺伝子のわずかの変異の結果がそうなさしめるものであり、それを科学的に知ることで、差別をなくすことができる・・・という著者の意見に賛同する。
2010.11/19の書評「解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯」の主人公:ジョン・ハンターが手がけたチャールズ・バーンの骨格標本写真(p154)は興味深い。