スパイス、爆薬、医薬品

―世界史を変えた17の化学物質-
著:ペニー・キャメロン・ルクーター,ジェイ・バーレサン
訳:小林 力
中央公論新社(2011/11)
ISBN978-4-12-004307-9
ナポレオンがロシア遠征に失敗した直接の原因は、冬将軍である。
本書では、付随的な原因として、軍服の錫製のボタンとか麦角アルカロイド中毒もあったのではないかと推理する。
化学物質が、歴史の転換点に関わった可能性を豊富なエピソードを交えて語るので、どんどん読める。
錫製品が低温に弱いことは、「スズペスト」として知られる。(p6)
麦角菌で汚染された穀物を摂取したことによる中毒は、大軍隊を崩壊させる威力がある。(p245)
壊血病予防にビタミンCが有効である知識があれば、ポルトガルは海外領土でスペインを凌駕し、オランダ人タスマンは、オーストラリアとニュージーランドの領有宣言していたであろう。(p56)
ルイス・ミラモンテス及びカール・ジェラッシ並びにジョージ・ローレンクランツは、ノルエチンドロン(経口避妊薬)を合成した。(p220)これは、女性開放の門を開けた。
化学というと、1モルのアボガドロ数個は?・・・で落ちこぼれた口だが、興味深く読めた。