馬・車輪・言語

─文明はどこで誕生したのか-
著:デイヴィッド・W・アンソニー
訳:東郷 えりか
筑摩書房(2018/05/28)
ISBN:9784480861351/978-4-480-86136-8
版元の書籍紹介文:
全世界30億人が使うインド・ヨーロッパ語。その言語を話していた祖先はどこにいたのか。なぜこれほど拡散できたのか? 言語学と考古学で文明誕生の謎に迫る。

書名を一見すると、名著「銃・病原菌・鉄」の類似歴史本のように思える。
しかし、こちらの方の中身はかなり難解である。
訳者もあとがきで、
第1章:母言語がもたらす期待と政治
第10章:馬の家畜化と乗馬の起源【歯の物語】
第17章:言葉と行動
が、少しでも楽に理解するために・・・と推奨するほどである。
古代の言葉は今は失われているため、著者は現在の各言語の共通点から印欧祖語の原郷を探る。
語彙に見られる温帯の植物相と動物相、および地中海や熱帯の動植物とは共通する語根(上巻p149)及び発掘結果から古代人の移動を探る。

現在「英語」が何故世界語になっているヒントとして、
自分が育ってきた母語である言語で、必要なことはすべて賄えるので、彼らはその言語だけを話すようになりがちだ。(中略)大学教育を受けた北米人の大半はこのカテゴリーにちょうどあてはまる(上巻p174)
が当たっていると思う。

馬を用いた弓騎兵は、
英雄的な一人の戦士から無名の兵士にな(上巻p323)
り、戦い方が変わったことから「イーリアス」のような(我こそは・・・)物語が成立できなくなったと分析しているところが面白い。