サルファ剤、忘れられた奇跡

―世界を変えたナチスの薬と医師ゲルハルト・ドーマクの物語-
著:トーマス・ヘイガー
訳:小林 力
中央公論新社(2013/03)
ISBN:9784120044793
ゲルハルト・ドーマクについてのウィキペディアの記述は簡単・簡素過ぎて、彼のことを正確に記述していない。
キーワードは、「サルファ剤」である。
サルファ剤は医学に革命を起こした(p345)
かつて感性症が何故発生するかは分かっていなかった。
かのゼンメルワイスが医者の指の媒介によって感染症が伝播すると発表した(p140)が、同業者からは理解されず、結局精神病院で没した。

その後、1871年にイギリスのジョゼフ・リスターが女王の手術時に石炭酸「殺菌」の重要性を浸透させた。

ドーマクは、ドイツの大手バイエルで、アゾ色素に手あたり次第化合物を側鎖させて結果が出ず、苦し紛れに「サルファ」と合成させたところ連鎖球菌に対して効果が認められた。(p155)
他の細菌に対して虱潰しに効果を探索するドイツ勢に対して、発表を見たフランスのフルノーは、色素とは関係ない無色の「サルファ剤」自体に効果あることに気づく(p196)
それまでは化学物質では病気は治らないという支配的な意見を蹴散らし、サルファで魔法の弾丸が製造可能であることを示した。バイエルは、研究手法を確立し、販売時の法規制の枠組みを導き、新薬のビジネスモデルの礎となった。

ドーマクがノーベル賞を受賞した時、既に時代はサルファ材から抗生物質へと変化していて、サルファ―材そのもののことも忘れ去られることとなってしまった。

オランダ・デルフトのレーヴェンフックが発明した顕微鏡の画像を描かせるため雇った「地元の絵描き」は、フェルメールではないか・・・と福岡伸一の書にあった。

 

2021.06/03に引っ越していった後、空家だったが、どうやら次の借主が決まったようだ。