危機の世界史

著:ダン・カーリン
訳:渡会 圭子
文藝春秋(2021/02)
ISBN:9784163913353
青銅器文明、アッシリア大国、ローマ帝国はそれぞれ栄華を極めたように見えたが滅んだ。
それら滅亡の当事者の人々は、危機を意識していなかった。
為政者の振る舞いが一因ではあるが、予想もせぬ外部的要因が組み合わさり、遠く歴史に名を留めることとなってしまった。
原著の年からして、“新型コロナ”“ロシアの他国侵略”は、取り上げられていないが、パンデミックが引き起こす、人々の非合理な行動についての記述は、先見の明があるように感じられる。

核爆弾の開発と、切り立った尾根道を縦走するようなその後の冷戦構造の解説は、我々は「ダモクレスの剣」の真下に今でも居ることを思い知らされる。
通常爆弾と比して、核爆弾は被災地の核物質汚染の関係で領土化することは不可能なので意味は無いのに、それをチラつかせる大統領が居ることの寂寥感。

作者は、相当な古代歴史オタクのようで、
インペトラム・ロマノルム:ローマ皇帝(p138)
レノヴァティオ・ロマニ・インペリ:ローマの刷新・再生・最新化(p140)
という言葉は、ウィキペディアにも無かった。

ソ連がかつて投下した最大水爆:ツァーリ・ボンバは、ノバヤ・ゼムリャ島上空で爆発した。
本書では、
爆発下の島はまさに跡形もなく破壊され(p169)
とあるが、グーグルマップ上未だに存在していることが確認できる。