映画「東京物語」

数日前に紹介した「恐怖の報酬」と同年公開作品。
ご存じ小津安二郎監督。BS小津作品特集で見た。
尾道から上京した老夫婦が、子供達を訪ねるが、実の子のそれぞれの家庭では配偶者との日々の生活に直面しており、二男の嫁で後家さん(原節子)が赤の他人で有りながら実に親身になって世話をしてくれる、という一種の家族の崩壊を描いた作品。
尾道を発つ前の荷造りシーンで、平山周吉(笠智衆)と妻とみ(東山千栄子)が失せ物探しをするやりとりがある。
小津監督は生涯独身だったそうだが、なぜ夫婦のこんな機微に触れるカットがとれたのだろう。
人間の個性は人それぞれであるが、普遍的に共感を感じさせるものがある。
それが表現方法は異なるが、芸術というものであろう。
この映画は、正しくその域に達している。
もう一点気づいたところ。
東京見物バスに乗るシーン。全員、座席の上で一斉に体を弾ませている。
今の「はとバス」では、さすがにこのようなことはないであろう。