騙された話

社会人になりたての頃。
大阪府茨木市の独身寮に住んでいた。
ある午後、夜勤明けでもう一角曲がれば寮に着く路地で、高級車がそばに来て停車し、窓を開けて、
「すみません、背広、買って頂けませんか?」と言う。
いい話が転がり込んできたかと、ふらふらと助手席に乗り込み、話しを聞く気になった。
「今日、背広の展示販売会がありました。しかし、これだけ売れ残ったんです。
もう少し売り上げて帰らないと、いけないので・・・」
と後席にある背広を示して言う。
うーん。背広か、バリエーションを安く増やすことができるチャンスかな・・・と考えた。ちょうどそのときお金をもっていた。
「一着4万円ですが、買っていただくなら4着で4万円にします。如何ですか。」
すっかり、掘り出し物にあたった気がして、4万円出して背広を手にした。
まるで魔術にかかったように、サイズも、柄も、全く気にせずに財布を手に取った。
男は、金を受け取り、スーパー白袋にそそくさと件の物を入れ手渡すと、ブォーンと去っていった。領収書も名刺も何もなしに。
そのものを手に路上に一人残されたとき、騙された、と覚った。
当日の晩飯は、砂をかむよう、味が感じられなかった。
あとで、叔母の旦那様(洋服仕立てを営む)に見せたら、
これはひどい粗悪品だ。雑巾にもならない。」と言われた。
魔が差した瞬間、生き馬の目を抜く世間の世知辛さを思い知った一件であった。
 
かねてから、フローリング床に剛性不足を感じるため、POLUSに電話。7/11来訪と決定。