やわらかな遺伝子

著:マット・リドレー
訳:中村 桂子 斉藤 隆央
紀伊國屋書店 (2004/05/03 出版)
ISBN: 9784314009614
昔から、「生まれか育ちか」とは、よく議論されてきたようで、本書は過去の各論を概観して、「生まれは育ちを通して」という原題に沿った結論に導く。
言い換えると、
p374:"環境に対応して柔軟にはたらく遺伝子"
いうところらしい。
 
書中、「ある音が聞こえる」ということの「メカニズム」を紹介していた。
鼓膜は空気震動に沿った動きをしているのだが、頭の中ではそれを分析選択し意味付け理解し、その結果「それが聞こえる」ということだそうである。
これは、
p279:その行為を音として聴いたときに発火するニューロンである。たとえば落花生を割るのを目にし、音を聴いたときには反応するが、紙を裂く音には反応しないニューロンが見つかった。それは落花生を割る音だけでも反応したが、割る光景を見ただけでは反応しなかった。(中略)音だけからある種の行為を「思い描いて」しまうらしい。
と脳内の心象概念とニューロン脳内組織の関連性の具体例を示している。
これを読んで、思い出したことがある。
子供の頃、親が紙袋からおやつを出すときは、それをバリッと破ることが多かった。
このため、その音にすっかり条件付けられたようで、ある日紙袋を破るバリッという音が聞こえた時、遊んでいた体が思わず停止したことがある。
早速そこに飛んで行くと、実際はまったく違っていて、笑われた。
その当時のその時は、脳内で該当するニューロンが活性化していたのだな、と思うと面白い。