絹の布

冬場は、そこここで、「パチッ」という静電気が発生する。
小さい頃、火花を発し、毛が逆立つ現象に興味を持った。
図書室から借りた本によると、「絹布にエボナイト棒」を擦り付けると、静電気が発生するこをが実験できる、と書いてあった。
それによると、エボナイト棒は、万年筆がその材質であり、絹の布は手近にあるきれっぱしを利用できる、とあった。
万年筆は、身近に見つけた。
絹の布は、母親のハギレ入箱から探した。探そうとした。なにがそれか分からなかった。
母に、「きぬのぬのって、どれ?」と聞いたら、ちょっと難しそうな顔をして、話しを逸らされた。
その様子から、なにかまずそうだと感じ、実験はとりやめた。
何故絹布が無かったかの理由が、それとなく分かったのは、もう少し大きくなってからだった。