愚行の世界史

トロイアからヴェトナムまで-
著:バーバラ・W・タックマン
訳:大社淑子
出版社:朝日新聞社
出版年月:1987年12月
ISBN:978-4-02-255783-4(残念ながら絶版のようだ)
ジャレド・ダイヤモンドの「文明崩壊」で紹介されていた本。
トロイア戦争ルネサンス時代の法王庁、合衆国独立を招いた18世紀英国、そしてヴェトナム戦争に介入した米国を取り上げ、当時の判断が如何に愚かであったかを容赦なく著した本。
トロイア戦争」の頃の時代は、神話から引いていた内容であろうが、その頃から人間が既にオロカであったことを示す。
ルネサンス時代の法王庁」は、レオナルド・ダ・ヴィンチミケランジェロなどの天才を輩出したが、宗教の世界では今読むと誠にオロカな法王達がうろうろしていた、とある。
小生は、ルネサンスというと、陽の部分しか意識していなかったようで、著者(はユダヤ系だそうなので、おそらくはキリスト教徒ではなかろう・・・)も、よくぞここまで陰の部分を暴いたな・・・という感想を持った。
「米合衆国独立」は、当時の英国政界がいかにオロカな判断を下し、アメリカを手放してしまったかを描く。
そして、「ヴェトナム戦争」。同様の内容は、デイヴィッド・ハルバースタムによって「ザ・ベスト&ザ・ブライテスト」として朝日新聞社から1999年出版されてもいる。
本書は、1983年に本国出版されているので、かなり先んじている。
p361で、『日本人は、宣戦布告なしに、奇襲攻撃で戦争を始める』との厳しい一文があるが、当の米国もヴェトナムでは、結局宣戦布告なしに、勝手にヴェトナムに入り込み戦線拡大をし、その結果敗れ去っていることを忘れてはならない。
さて、何故人間はオロカな行動をとるのか。
相手を正当に評価せず、自らの思い込みでがんじがらめになり、殻に閉じこもった判断を下すから。
と読み取った。
これは、人間が生きていく限りにおいて、囚われてしまう因業のようなもので、社会的地位の差異に関係なくあり続け、配下の人間は桎梏の苦しみを味わう・・・のか。