安全の確保のためには職責をこえて一致協力しなければならない。

新幹線の通信指令に勤務していた頃である。
業務は、通信関係の統制ということで、言い換えると専ら電話で通信機器の故障対応を指示するものであった。
新幹線車両の通信系統が全断のまま走行する、というのが移動局として最悪の事態であり、そこまで悪化しなくても、業務系電話が使用不可とか、公衆系電話が使用不可とかの故障が発生することがあった。
全断発生時は、当該車両が停車する主要駅に設けられている通信検査班から精鋭が電車に乗り込み、1号車ボンネット内(0系です)に設置されている列車無線装置の故障対応復旧にあたった。
そのような場合は珍しく、ほとんどの場合は、「使用停止」という措置にして、当日終点の電車基地に引き上げた後、通信検査班の面々が故障修理(チェンジニアだが)をすることになっていた。
ある日の当直中、車掌系無線の制御盤の故障が発生した連絡が入った。
車掌系無線制御盤は、当時12号車のグリーン車の車掌室壁面に装着してあったが、電源トグルSWレバーが車掌用の固いケースで折損し、使用不可になる事象が頻発していた。
運用を調べると、東京駅終着後、折り返し整備した後、下り運用となることが分かった。
そのままであると、車掌無線が終日使用不可となってしまう。
整備時間を利用して、制御盤パネルを外し、電源SWの内部配線を接続状態に変更することが可能であると思い、他の指令員に提案したら、全員の賛同を得た。
通信指令長の許可が出、工具セット(宝山のS-10)を携えてホームに急ぐ。
電車が入線。12号車付近で待ち構える。
旅客が降車後、車掌長(?)にかくかくしかじかで修理したいと説明。
当初怪訝な顔をしていたが、ぱっと顔を輝かせて快諾頂き、半田コテを温め開始。
電源プラグを抜去後パネルを外し、内部のSW電極を電源常時投入状態に配線変更。
半田付けには当時から自信有り、問題なく終了。
十分時間を余して、整備真っ最中のところ扉を開けて頂き、車掌さんの感謝の言葉とともに降車。
小さなやりがいを感じた一瞬であった。
尚、本日の表題は、その会社の安全綱領。いまでもするする出てくる。