著:アナンサスワーミー・アニル
河出書房新社(2010/09発売)
ISBN:9784309252407
著者が、世界各地の天文物理研究の現場に出かけて、研究者に実際に会って話を聞きながら、宇宙の謎に対するレポートを、2009年頃の知見を元に上梓したもの。
米国西海岸のウィルソン山天文台、パロマ天文台を皮切りに、南米チリのパラナル天文台等天文ファン垂涎の地を巡る。
パラナル天文台は、相対性理論に基づく重力レンズ効果の写真を撮影した場所だ。
有名どころのハワイ島マウナ・ケアのケック天文台にも。
実は、この天文台の片方の名称は、ホフマン天文台になるかも知れなかったというエピソードを紹介している。
米国では、大金を要する施設の場合、篤志家の寄付を募ることが多く、その名称はもちろん寄付者の名前を付したものになる。
1993年、最初に連絡があった富豪は、米国の外車販売業元締めの故マックス・ホフマンの妻であった。
ところが、寄付署名をする寸前になった彼女が亡くなった。
一方、まだ不足分する資金に対して、石油業を営むハワード・ケックが出資した。
このため、望遠鏡には、「ホフマン」「ケック」となる方向となった。
最初のホフマン財団は、そのことを知ると一度渡された資金に遺族が難色を示し、結局ホフマン側の出資金は返還され、ケックがI及びIIとも資金を出してその名が確定した。p152〜154
ウィキペディアにも無い逸話である。
サドルロードからマウナ・ケア山頂までの道路描写は、2009年頃の様子で、現在はもう少し状態は良い。
天文台までのアプローチは、今年3月に訪れたマウナ・ケア山頂ツアーを思い出しながら読めた。
これは、実際にその場を訪れていないと味わえない感触である。
第6章の南アフリカのSKA(Square Kilometer Array)大型電波望遠鏡は、衛星写真が見られる。
https://www.google.co.jp/maps/@-30.7127647,21.4428888,1223m/data=!3m1!1e3?hl=ja
最新情報では2020年観測開始とある。
著者は、スーパーカミオカンデにも来たことが謝辞で触れられている。章を作って頂きたかった。