5球スーパーのキット

中学時代は科学クラブに入っていた。
確か、2年生の時だったと思う。
各クラブで使用する予算取りの会議が開催されることとなった。
その年度、科学クラブでは、「ラジオを作ろう」ということとなった。
初歩のラジオ」とか「ラジオの製作」とか、いろいろ調べて5球スーパーのキットを購入する方針を立てた。
生徒会で、それをプレゼンテーションする役が回ってきた。
目的は、「ラジオキットを購入してほしい」という簡単なことだが、単にそれを言っても受けないし、
もう今更ラジオ?いっぱいその辺にあるじゃ〜ん。
と、予算を確保したい他のクラブ員から反対意見が出るのは目に見えていた。
考えて「煙に巻く作戦」をとることとした。
『そもそも、科学クラブとして、ラジオを製作するにあたり、中波帯放送周波数を
 6BE6で、中間周波数に変換し、6BA6で中間周波数増幅・・・云々・・・電源整流管は5MK9であります。』
と、一般人には訳の分からない用語を頻発して一席述べた。
ら、予算が通った。
クラブ員と喜びあったが、その後そのことはすっかり忘れて本当に購入されたかどうかフォローしなかったし、学校に勤めている人たちは、誰も、何も、話さなかった。
後日談。
(さて、めでたく購入された、)5球スーパーキットは、理科室の隣接の資料室(通常施錠)にあることを、
3年生になってなにかの折に入室したときに発見した・・・時には、心の中の熱は冷めていて、
ああ、ここにあるんだ・・・と静かに思った程度であった。