旅のラゴス

著:筒井康隆
徳間書店
秋口の朝日新聞の何かの書評欄に本書のことが出ていた記憶があって、頭の片隅に残っていた。
いつもの図書館では、文庫本は貸し出し中が続いていたことから、市立図書館に出向いた。
蔵書中、文庫本は貸し出し中で、蔵書庫中の単行本の方を借りた。
1986年9月30日発行の初版本であった。
平明な記述でさらりと読める長さだが、内容は濃い。
氏の文明論として、考えさせる内容が重い。
舞台は、超能力を使用することができるものの、工業化以前の社会。
旅人のラゴスが、諸方を放浪する。
一度滅びた高度な文明を記述した書物を学習することで、その社会を変革しようとするが、
守旧勢力との軋轢も描かれる。
もし、現代文明が滅んだ後、地球の覇者になる生物は、どのようなものになるのであろうか。
約6550万年前のKT境界を成した直径約10kmの巨大隕石の落下がなければ、約6550万年後の今、世界は全然違っている。
人智の世界の限界を畏れなけらばならないと感じた一冊。
リベストモス、セシラ、ウラムジ等架空の固有名詞のセンスには感服。