人類の記憶

−先史時代の人間像-
著:アンリ・ド・サン=ブランカ
訳:大谷 尚文
法政大学出版局(2005年12月)
ISBN:9784588022289
ウェブ広告の内容説明
先史考古学の成果を俯瞰しつつ人類の起源をめぐる論争の紆余曲折を辿り,食料獲得・宗教・暴力・環境破壊等の人類永遠のテーマを発掘する。先史社会への入門の書。
 
原著の言い回しがやや文語体なのかもしれないが、最初は読みにくかった。
ひとりハックスリーが、この頭蓋骨は私たち自身が猿に近い以上に猿に近いということはまずないとした。(p6)
彼は、近いことを言おうとしたのか? はたまた遠いことを言おうとしたのか?
分からなかった。
第三章:ネアンデルタール人の最後、の頃から読みやすくなってくるが・・・
旧石器時代後期に属する文化について、
・アシュール文化
・ムスティエ文化
・カステルペロン文化
・グラヴェット文化
・オーリニャック文化
・ソリュートレ文化
・マドレーヌ文化
などが、ほとんど読者既知情報の如く語られるので、門外漢にはするすると入ってこない。
収集した情報考え方を著す切り口をさほど整理せず、時代的に沿った形でどんどん書いていったような印象。
著者は、「科学ジャーナリスト」とあるので、古代人の行動を描写する場面がある。
学究的な考古学者とは多少違う立場にあることから、その発掘場所ではかつてこのような場面があったのではないか・・・という個人的な考えも入る記述が最後の方でなされている。
とすると、各年代文化の代表的な各遺跡の個別的な状況から、それの各々の状況についていっそ想像を逞しくして各章のとっつきに入れ、その文化の特質を読者に伝える・・・という手法をとるべきではなかったか。