遺伝子

-親密なる人類史‐
著:シッダールタ・ムカジー
監修:仲野 徹
訳:田中 文
早川書房(2018.2)
ISBN:9784152097316/9784152097323
遺伝子の発見と応用に関わる歴史と現代の問題を筆者の個人的な一族の関連と絡めて語る良書。
「二重らせん」モデル発見の経緯も、よく整理されいて分かりやすい。

ダーウィンは、1859年に「種の起源」を著し、進化を説いた。だがそのメカニズムは混合遺伝:代を経るごとに薄まる、であった。
メンデルは、1866年に論文を発表し遺伝に関する法則を発表した。それは、粒子遺伝:代を経ても表現型により遺伝する、であった。
論文が掲載された『ブリュン自然科学会誌』は、ダーウィンの蔵書中にあることが確認されている。
しかし、メンデルの「植物の交雑実験」が記載されている52頁には、何らの書き込みが残されていない。上巻p74
ということは、ダーウィンは、もう一歩のところで粒子遺伝の概念にたどり着けなかった・・・ということになる。

メンデルの遺伝の単位を示す造語を考えたウィリヘルム・ヨハンセンは、当初(ド・フリースが使用していた)パンゲン(pangene)を使おうと考えた。
だがそれは、ダーウィンが唱えた形質遺伝に関する誤解概念:混合遺伝パンゲン説(pangenesis)と混同される恐れがあった。
そこでヨハンセンは「パンゲン(pangene」を縮めて「gene」とした。(発音のまちがい避けたいという思いから、ベイトソンはgenにしたかった上巻p110
ということは、遺伝子の当初の発音は、「ゲン」を意図していたのか・・・

マルティン・ニーメラーの言葉が刺さる。

上巻p91の
(少なくとも「遺伝的な尻尾」)を消すことは不可能なはずだった。
は、
(少なくとも「遺伝的な尻尾」)を消すことは可能なはずだった。
ではないだろうか。