統合失調症の一族

―遺伝か、環境か-
著:ロバート・コルカー
訳:柴田 裕之
早川書房(2022/09)
ISBN:9784152101686
1970年代半ば、12人の子供を設けた内半数が統合失調症と診断された米国のとある家族。
末娘が幼いころ受けた性的虐待をも公開することを厭わず公開した内容と公の資料を元に著されたノンフィクション。
精神に異常を来す原因は、“生まれ”か“育ち”か・・・近年になっても学者は、原因を特定するに至っていなかった。現在でも、異説ある。
原因究明のためには、(動物実験ではなく)「人間」そのものを対象とした研究が必要だが、本書ではその実例が実名を持って詳述されている。
何と、妊娠中にコリンを十分に摂取することで統合失調症予防に繋がる(p390)という、思わぬ内容にも触れられている。
ヒトゲノム分析結果からDNA解析を通じて、その病に至る要素の追跡がなされているが、現実の社会では、一旦そのようなレッテルが貼られると通常復帰はなかなか難しいのが実情であると感じる。