夏季実習

仕事場は、ビル屋上にこれ見よがしの大パラボラアンテナを装着していた建物であった。
事業場構内をかすめる新幹線の窓から事務所内が透けて見えていた。その後しばらくは、お互い瞬時こんにちわ状態が続いていたが、やっとセキュリティの必要性に気づいたか、数年後、不透過性のフィルムが貼られた、と思う。
仕事(?)は、デジタルICの評価。
当時、高速動作用として、EML(若しくはCML)が開発されつつある頃であった。
各種パラメータ下での高速動作時におけるインバータの特性をサンプリングオシロスコープで測定する、というもの。
職場の偉い人が方々で会議をしていて、良く聞こえてきたのが『歩留まり向上には、・・・』という枕詞だった。
また、「トラ技」の発売日には、構内書店に購入者が列をなしていて、並びながら、流石天下の○○電気と内心感心もした。
仕事の内容よりも、なにより昼食が楽しみであった。
社員食堂定食には、なんと100円メニューがあった(と覚えている)。
実会社なので、実はどんなお姉さまがいらっしゃるか、を内心楽しみにしていたのだが、まったくの男社会で、その点(どの点?)は残念であった。
実習が終わり、帰省したら、母が「都会はどうじゃった?」と、それとなくそっちの方の心配をして下さったのが面映かった。