三波伸介の「減点パパ」

その昔、NHKの「お笑いオンステージ」をよく見ていた。
番組後半に「減点パパ」という名前で、三波伸介さん(故人)がその絵心を発揮するコーナーがあった。
お子さんで出てきて、お父さんのお顔の特徴を縷々述べ、伸介さんが即興で似顔絵を描き、出来上がった頃当のお父さんが同席し、日頃のお父さんの言動に○印マグネット(又は×印マグネット)を似顔絵上に付けて大円団、というものであった。
伸介さんの手は上手く、お子さんから父親を想像することもできることもあろうから、結果的にかなり似たお顔になるのがほとんでであった。
ある日、可愛らしいお嬢さんの出演であった。
かなりごつい顔に仕上がった。父親のご出現〜〜〜で空席に腰掛けたのは、ケーシー高峰さん、であった。
彼は、当時、猥談系列の話術で有名だった。
ご家庭でのお父さんは、見かけによらず(!)しごく真っ当な父親であるようなやりとりの後、お嬢さんの作文が読み上げられた。
その途中、図らずも、彼が泣き出したのだ。
父親として子供を思う心と、外で芸人として生活をする心との相克であったのであろうか、人間として、子を思う心は普遍的なものだな、と子供心に思った一瞬であった。
テレビを見ていたこちら側は思わずジーンときたが、三波さんはそれに流されず番組を捌いたように覚えている。内容は事前に知っており、ゲストの本当の姿もとっくに分かっていたので制御できたのだろうか。司会者のプロだ・・・と後日思った。
三波伸介氏:1982年(昭和57年)12月8日逝去