奇想の美術館

―イメージを読み解く12章-
著:アルベルト・マングェル
訳:野中 邦子
白水社 (2010/12/10 出版)
ISBN: 9784560080993
ブック・カバーの図版は、ラヴィニア・フォンターナの「トニーナの肖像」という、一種異様なイメージで、びっくりさせられる。
モデルは、アブラムス症候群という全身多毛症と知られる皮膚病であるので、じっくり見ると彼女の内面は別段怪物ではないことが分かる
絵画をはじめとして彫像、塑像、建築物、記念碑、写真というものは、そのイメージを受けた人が解釈するのであるが、その過程において、解釈というものが各人の内面においてなされる。
著者は、彼が取り上げた12の画像を豊富な周辺事例を引きながら解説する。
ロベルト・カンピンの「暖炉囲いの前の聖母子」は、古典絵画の中の比喩の謎解きの例。
一方、マリアナ・ガートナーの「立っている4人の男」は、一切の解釈を拒否する構図で、現代美術の一つの典型である。
世界遺産、ブラジルの「コンゴーニャス聖堂」及びフランスの「アル=ケ=スナンの王立製塩所」にいらっしゃる方は、本書必読。
 
電車内で、次のページをめくったら、クールベの「世界の起源」の図版が出てきて・・・、思わず手で隠した。