コンピュータに記憶を与えた男

―ジョン・アタナソフの闘争とコンピュータ開発史-
著:ジェーン・スマイリー
訳:日暮 雅通
河出書房新社(2016/11発売)
ISBN:978-4-309-25358-9
最初にデジタルコンピュータを製作した・・・として広く人口に膾炙しているのは、ペンシルベニア大学のジョン・エッカートとジョン・モークリーらによるENIAC(1945年)である。
だが、歴史的にはそれを遡る1939年にアイオワ州立大学のジョン・アタナソフらが開発したABCであることは、あまり知られていない。
類似のことは、飛行機の歴史にもあてはまり、世界初の動力飛行は1903年12月の「ライト兄弟」ではなく、グスターヴ・ホワイトヘッドによる1901年8月の初飛行が世界初である。
ワシントンのスミソニアン博物館では、現在ライト兄弟が初飛行者との展示内容であるが、当初は「ラングレー機」が最初・・・と発表していたのだ。その後いろいろないきさつがあり、当該博物館は「ライト兄弟」としか言えない立場にある・・・
閑話休題
既に、コンピュータの最初の開発者がアタナソフであることについては、
・クラーク・R・モレンホフの「ENIAC神話の崩れた日」
・アリス&アーサーバークスの「誰がコンピューターを発明したか」
という先行書がある。
そのなかで、「アイオワ州」にある大学で学んだことが本書を上梓した理由と思われる、と訳者が記している。
アラン・チューリングフォン・ノイマン、コンラート・ツーゼ、トミー・フラワーズ、マックス・ニューマンらの初期の関係者も出てくるが、もう少し整理されても良かったか。
前半の生い立ちあたりと特許紛争描写の終盤が面白い・・・中盤は少々中だるみの感があった。
アタナソフは、問題解決に積極的に取り組む自身の性格が、今まで世の中に無かった物を創造したが、それを理解できる白楽が周りにおらず、大変苦労した。
しかし(航空機同様)時代が、それを求めた結果、今日の隆盛を迎えている。