グラハム・ベル空白の12日間の謎

―今明かされる電話誕生の秘話-
著:セス・シュルマン
訳:吉田三知世 
日経BP社(2010年9月27日)
ISBN:9784822284398
電話の“発明者”アレグザンダー・グラハム・ベルは、特許件出願時に競争相手:イライシャ・グレイよりも数時間早かったため、その特許権が認められた・・・という人口に膾炙している“物語”が虚構であったことを述べた本。
本書ではその「電話器」自体、更なる先行者:フィリップ・ライスが居た・・・ことまで解明する。
発明発見物語には、“ニュートンのリンゴ”とか、後日の人々によって捏造された尾ひれがつくことが多い。
飛行機の発明者においても、ライト兄弟の“ライトフライヤー号”が皮切りとされるが、近年日本で試みられたレプリカ製作では、風洞実験結果:実飛行不可能、のためプロジェクト中止になったと聞いている。
世界初という点については、グスターヴ・ホワイトヘッドによる1901年8月の初飛行が世界初であるということがウィキペディアにも掲載されている。
ベルもライトも競争者から技術を剽窃したと思われる。
なぜそうしたか、また、そうしなければならなかったか・・・について資本主義米国の社会がそう為さしめた、という感想を得た。

歴史というものは、常に挑み、問いたださねばならないということである。この点で妥協すれば、世代から世代へとささやかれる歪められた物語を暗黙のうちに受け入れてしまうことになり、(中略)「伝言ゲーム」のような状況に陥ってしまうだろう。p312

p26、4行目及びp29最終行の“感心”は、「関心」であろう。