高校世界史教科書に見る「暦」の扱い

手元にある2015年版の各社「世界史B」中で、「暦」はどのように記されているかを調べた。

・東京書籍「新選世界史B」p9:グレゴリウス13世は(現在の)グレゴリウス暦に名を遺した

・山川出版「高校世界史B」p33:現在もちいられているグレゴリウス暦は、カエサルが制定したユリウス暦からつくられたものである

実教出版「世界史B」p43:エジプト起源の太陽暦をもとにユリウス暦を制定した(前45年)。これが、こんにちのグレゴリウス暦の基礎となっている

・東京書籍「世界史B」p51:ローマの太陰太陽暦は長年の間に大きなずれが生じていた。不合理是正のため、カエサルは前45年、季節と暦のずれを是正する改革に着手(中略)平年を365日とし、4年に1回の閏年には、2月に1日を加えて366日とした。カエサルの氏族名ユリウスにちなむ暦法

帝国書院「新詳世界史B」p108.109:近代以降、キリスト教世界で使われた太陽暦であるグレゴリウス暦が世界に広まった。グレゴリウス暦はローマのユリウス暦にもとづいてつくられた

帝国書院は、見開き2頁に渡って暦に纏わる話題を展開していて興味深い。

ここで、2016.10/04の「文科系のための暦読本」と帝国書院の内容を合わせて再掲したい。

ユリウス改暦以前:
1月 Januarius・・・ヤヌアリウス(始まりの神ヤヌスの月)
2月 Februarius・・・フェブルアリウス(死者の月)
3月 Martius・・・マルティウス(軍神マルスの月)
4月 Aprilis・・・アプリリス(愛の女神アフロディテの月)
5月 Maius・・・マイウス(豊穣の女神マイアの月)
6月 Junius・・・ユニウス(結婚・出産の女神ユノの月)
7月 Quintilis・・・クインティリス(数詞)
8月 Sextilis・・・セクステレス(数詞)
9月 September・・・セプテンベル(数詞)
10月October・・・オクトーベル(数詞)
11月November・・・ノヴェンベル(数詞)
12月December・・・デケンベル(数詞)

古来、1月2月は冬籠り期間のため名無しで、活動開始の3月から命名されていた。
そんな訳にも行かなくなり、冬至明けを年初とすることとしたところ、その結果、7月以降が、
7月 Quintilis・・・旧ローマ暦で5番目の月の意味(Quintが語源)
8月 Sextilis・・・旧ローマ暦で6番目の月の意味(sixの語源)
9月 September・・・旧ローマ暦で7番目の月の意味(sevenの語源)
10月October・・・旧ローマ暦で8番目の月の意味(Octoは8の語源)
11月November・・・旧ローマ暦で9番目の月の意味(nineの語源)
12月December・・・旧ローマ暦で10番目の月の意味(ギリシャ語のdekaが語源)
という風にズレてしまった。

BC416年、ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)を称えて、7月を改名。
1月 Januarius
2月 Februarius
3月 Martius
4月 Aprilis
5月 Maius
6月 Junius
7月 Julius・・・ユリウス
8月 Sextilis
9月 September
10月October
11月November
12月December
AD6年、ユリウスの姪の子アウグストゥスユリウス暦閏年を正した功績で、8月を改名。
1月 Januarius
2月 Februarius
3月 Martius
4月 Aprilis
5月 Maius
6月 Junius
7月 Julius
8月 Augustus・・・アウグストゥス
9月 September
10月October
11月November
12月December

各月の命名の経緯は、大変面白く、現代生活にも密着した話ではあるが、教科書的には、枝葉末節気味とも思う。