ヤバンな科学

著:池内 了
晶文社 (2004-08-30出版)
ISBN:9784794966308 (479496630X)
p13でスペインのオルテガ・イ・ガセットの『大衆の反逆』を引き、
専門分化が進むにつれ、科学者は、自分が実際に研究するごく狭い領域についてはよく知っているが、それ以外のことについてはまったく無知になっている。にもかかわらず、自分が知らない問題についても無知者として振る舞わず、知者の持つ傲慢さで臨むようになった。科学者こそ近代の野蛮人ではないか、
であるから、専門主義を脱却した科学者と総合的視野をもった市民との協働が大切、と説く。
 
さて、p63「新幹線に携帯専用車を」で、
新幹線車中では最低10台の携帯にスイッチが入っているだろう。複合効果を考慮しなければならないのだ。さらに、金属で囲まれていると自由境界条件ではなくなり、反射して戻ってくることを考慮しなければならない。その条件下では、誘導磁界の強度が距離の二乗で反比例して減衰することにはならず、距離には関係しなくなるのだ。(中略)新幹線内での使用を考えれば、複数の携帯が反射空間で使われる条件で最大干渉距離や累積電磁波強度を見積もらねばならない。その条件の下で、一般人への電磁波被曝問題も真剣に再検討する必要があるのだ。
と、ある。
この主張は、やや一方的である。
2006.7/25の「所感」でも関連する事項を述べているが、
・複数の携帯電話を保持する人間の電波吸収作用を考慮していない
・車体の窓(電磁波を反射しない)を考慮していない
・車台VVVF機器からの漏洩電磁波(おそらくこちらの強度の方が強い?)を考慮していない
著者は携帯端末はお使いではいらっしゃらないようなので、不快な隣席での携帯通話体験からお話を展開されたと推定しているが、マナー問題に留めておいた方が良かったような気がする。