強度試験

新幹線0系の列車無線車上局無線装置は、1号車のボンネット内に設置されていた。

列車無線システムは、400MHz帯の空間波だったことから、1号車の屋根上アンテナが設置されていた。

列車無線機器の老朽劣化と新規100系の開発に伴い、列車無線システムが「空間波」方式から「漏洩同軸ケーブル」方式に変更された。

無線装置は、1号車内での設置位置に変更はないが、屋根上アンテナから車体横アンテナに変更されることとなった。

車両設計事務所から、1号車車体下部中央付近に設置用の場所の提示を受け、空中線設計・製作を無線担当の三菱電機が行った。

電波を通過させる材質で外面を構成する必要があるため、高速走行中に飛び石等の影響で破損が発生「しない」ことの裏付けを持つことになった。

鎌倉にある当該社の工場に試験設備がある・・・ということで、ある冬の日、強度試験がなされた。

試験は、塔の上から高度を変え鉄球を変えてアンテナ筐体に落下させて行われた。

(まるで、シナリオがあったように)実験は滞りなく完了し、仮に車両設計事務所から空中線筐体の強度照会があっても、そちらを満足させるような結果を得ることができた。

個人的に疑問に思ったのは、実験は空中線筐体に直角に鉄球を落とすことで行われた。このことについてで、実走行中の場合飛び石は角度を持って衝撃するのではないか・・・という点であった。

衝撃度が最大になるのは「直角時」であることには異論はないが、実際の状況では無いだろうなと思った。

しかし、その後長年に渡って、アンテナ部が破損したというニュースは聞いたことがないので、取り越し苦労であったようだ。