量子力学で生命の謎を解く

著:ジム・アル=カリーリ、ジョンジョー・マクファデン
訳:水谷 淳
SBクリエイティブ(2015/09発売)
ISBN: 978-4-7973-8436-9
科学最大の謎を三つ挙げるとしたらふつう、宇宙の起源、生命の起源、意識の起源となる。量子力学は一つめの謎と密接に関係しているし、(中略)三番目の謎ともつながりがあるかもしれない。そして(中略)二つめの謎を解くのにも役立つかもしれない。p307
恒星(太陽)が核融合していることは、量子力学のトンネル効果によってなされていることが現在説明されていて、科学の定説となっている。
初期の地球の原始大気に電気スパークを飛ばしてアミノ酸を生成させた「ミラー=ユーリーの実験」では、ネバネバのタール状のモノはできたが、
半世紀以上経ったいまでも、実験室で作られた原始のスープからオパーリンとホールデンのいう原始の複製体が生成したことは一度もない。p310
著者は、量子力学的なコヒーレント状態が維持される条件があれば、
量子的な原子複製分子がやがて自己複製状態に収縮すると(中略)大腸菌のように複製を始め、それによってこの系は不可逆的に変化して古典的な世界へ入る。p325
と説明する。
蝶や鳥の季節の渡りに必要なメカニズムの研究においても、量子力学に掘り下げて説明ができるようになってきた。
なぜ「匂う」ことができるのか・・・分子構造説、分子振動説等ではすべてが説明できていないなかで、ルカ・トゥリンは、
生体分子は、電子の量子トンネル効果を使って化学結合の振動を感知しているのだと提唱した。p176
上記に関連した本を、2012.06/15に「匂いの帝王」として掲出している。
この本でも出てきて、最初は驚いたが、内容的には納得した。
世の中の仕組みは、ミクロベースに量子力学があり、分子ベースにサイズアップされると熱力学の世界となり、最終的にマクロ世界を記述するニュートン力学で構成されているという説明図・・・p331
的な様式図は初めて見た。なるほど、更なる研究は必要だが、科学の展望を探る上での好著といえよう。