神は老獪にして・・・

アインシュタインの人と学問-
著:アブラハム・パイス
訳:金子 務、岡村 浩、太田 忠之、中沢 宣也
監訳:西島 和彦
産業図書 (1987/01/30 出版)
ISBN: 9784782800355
イアン・スチュアート著の「もっとも美しい対称性」に、「最も偏らないアインシュタイン伝記」との評価があったので読んだ。
これは、手ごわかった。
文中に数式が否応無しに出てくる。
著者は、2000年没であるので、1955年に逝去したアインシュタインよりも長生した。
アインシュタインと同じ物理学者であった。
その彼の何がしかの対抗心か、「認識論的骨格、科学的思想構造についてはきわめてパイスが寡黙なのである」p709あとがき
にあるような、食い足りなさが残る。
さて、アインシュタインの少年時代の成績はたいしたことはなかった、ということが言われているが、本書では幼少の頃から聡明であったことが明確に述べられている。
また、少年時代に軍隊(自分自身の意思とはまったく関係ない兵隊たちの運動)は彼をぞっとさせた(p51)とあるのは、思想に囚われない彼の面目躍如たるものがある。
マクスウェルは、その波動方程式で、光速一定を導いたが、その意味を説明し更に次の次元の展開に導いたのは、アインシュタインであった。
プリンストン高等研究所への応募会見のとき、彼は年俸3000ドルを希望した。
が、初代所長アブラハム・フレクスナーは15000ドルと決定した。
チューリヒ連邦工科大学では、彼は伯楽に恵まれなかった(ハンリッヒ・フリートリッヒ・ヴェーバー)が、それにもめげず思索を極めたことから、その天才性が伺える。