解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯

著:ウェンディ・ムーア
訳:矢野 真千子
河出書房新社 (2007/04/30 出版)
ISBN: 9784309204765
なんと、「ダーウィン」以前に進化論に到達した人物がいた。
主人公は、自分で確認した事実を元に、思う存分「畸人」として遺憾なく発揮した人物である。
その卓越した業績は、後世に伝えられることが、ほとんどなかった。
本書が、その道を開拓した。
中身は、とにかく、面白い、の一言。
旧来の瀉血・下剤・吐剤(現在の医療の常識からは認められていない)に盲目的に依存した医療に公然と反旗を翻した人物を描写して余り無い。
しかし、周囲の凡庸な取り巻きの足の引っ張り合いから、不当な扱いを受けた。
自ら作成した標本や収集した稀覯動物剥製は、彼の死後散逸した。
それにも関わらず残された彼の業績は、ロンドンのハンテリアン博物館で公開されているということである。
ベンジャミン・フランクリン(映画スラムドッグ・ミリオネアで、100ドル紙幣に肖像が描かれていると知った)は、1785年ジョン・ハンターに相談している(p284)
アダム・スミスとの邂逅(p297)
詩人バイロンに対する助言(p298)
オーストリアの作曲家ハイドンはポリープ手術手前で怖気づいた(p300)
等々、逸話が満載である。