日本のルィセンコ論争

著:中村禎里
解説:米本昌平
みすず書房(2017年7月)
ISBN:9784622086208
ルイセンコといえば、ソビエト連邦スターリン政権下で、獲得形質の遺伝性を主張し、イデオロギーを科学に持ち込んだ反面教師として歴史に名を留めるべき人物である。
権勢をほしいままにし、数多くの論敵を強制収容所送りにしたことが分かっている。
本書は、その彼の思想が日本にどのような経緯で持ち込まれ、理論化し権威化され思想闘争も揉まれ、消滅していったかを関係者の実名を挙げて解説する。
科学的実証主義の観点から乖離し、マルクス主義との邂逅から、ブルジョア主義との階級闘争へと論点がずれた内容で主張しあう・・・という日本的風土。
実際に、ルイセンコの提唱した低温処理を利用するヤロビ農法が寒冷地の農家に広まったという。
1960年頃まで関係する各種の書籍が発行されている。
当時の農家での受け取り方はどのようであったのか、興味がある。