アインシュタインの戦争

-相対論はいかにして国家主義に打ち克ったか-
著:マシュー・スタンレー
訳:水谷淳
新潮社、2020年
ISBN 978-4-10-507161-5
第一次世界大戦当時のアインシュタインはポッと出の冴えない科学者で、難しい理論:特殊相対性理論を提唱していた。
1919年に、英国のアーサー・エディントンが戦争相手国の科学者だったアインシュタインの特殊相対論の検証として、日食による恒星のズレを観測した。
英国、ドイツ共に戦争相手国同士で、政治と科学とは各々の国内では排他感情が渦巻いていた。
その中で、エディントンは良心的兵役拒否者として敵国の科学者の理論の裏付けとなる日食観測を敢行し、ニュートン力学に引導を渡す:アインシュタインを世界的に有名にする役目を果たした。
結果的に、丁度良い時期に夫々の人物が各々の役目を果たしたことを解説した本。
アインシュタインは天才だが、人間臭い一面もあったことも省略されず記されているのは、良い。
本書中、恒星からの光線が時空の湾曲で曲がる・・・ことを”光線が重力によって曲がる”と表現している箇所が多々ある。これは、本書の科学的見地からは正確ではない。

p59に記されている「東経14度58分2.595秒」は、マルタの40km東方海中になってしまう。
「セント・ジョージズ・ベイ」の正しい位置は、35°55’31″N 14°29’10″E

p157で、
ヘンリー・モーズリーが1915年のノーベル物理学賞決定・・・とあるのは、間違い。
当人は、当該年8月10日、ガリポリ戦で戦死している。