キャプテン・クック

―世紀の大航海者-
著:フランク・マクリン
訳:日暮 雅通
ISBN:9784887218093
いわゆる、キャプテン・クック本である。
いままでに、
・青い地図 : キャプテン・クックを追いかけて, 上, 下
・最後の航海 : キャプテン・クックハワイに死す
・船がゆく : キャプテン・クック支配の航跡
を読んでいる。
本書は、原著2011年発行の「決定的評伝」とされている600頁弱の大冊。
上述書との違いは、"探検先"の主に太平洋の島嶼部の人々の当時の権力構造に対し、如何に19世紀の価値観を持ったクック一行が影響を与えたかについての内容に詳しいところ。
人間は、氏も育ちも、生育環境で如何様にも変化し得る。
何気ないある動作が、違う社会ではとんでもない禁忌であることもある。
最初に異文化の交流が発生する時には、お互い相手が持っていないものが魅力的に映る。
根本は人間であるので、メンツ、能力の差異、その時々の勢いで、往々にして悲劇的な要素を帯びた結末になったことが、何回も描写される。
クライマックスは、ジェームズ・クック本人がハワイ島で死亡するところである。
大航海者にして、個人的な肉体・頭脳を持った人物がそこで果てた。
 
気になった点をふたつほど・・・
p337に、
クックは今まで知られておらず、地図にも載っていない島に到達して、"ニューカレドニア"と名付けた。
到達したのは、北西から南東に三百マイルの長さがある、太平洋で四番目に大きな島、ニューカレドニア島の北東の角だった。
とある。
ニューカレドニア島の北東の角」は、単に「「ニューカレドニア島の北端」でよいと思う。
ニューカレドニア島の北東」では、島のほとんど片側の長い海岸線が相当することになってしまう。
 
第一回目の航海で、壊血病の患者を出さなかった。このことをウィキペディアでは、
『この航海でクックはただ1人の船員も壊血病で失わなかったが、これは18世紀においては奇跡的な成果であった。1747年に導入された英国海軍の規則に則って、クックは柑橘類やザワークラウトなどを食べるように部下に促した。クックが部下にこれらの食物を摂らせた方法は、指導者としての彼の優れた資質をよく物語っている。当時の船員は新しい習慣には頑強に抵抗したので、最初は誰もザワークラウトを食べなかった。クックは一計を案じ、ザワークラウトは自分と士官だけに供させ、残りを望む者だけに分けてみせた。上官らがザワークラウトを有り難く頂戴するのを見せると、1週間も経たぬ間に、自分らにも食べさせろという声が断りきれぬほど船内に高まった、とクックは日誌に記している。』
とあるが、本書ではそれに言及したところは無かったように思う。