イザベラ・バードのハワイ紀行

ISBN:9784582832495 (4582832490)
平凡社 (2005-07-19出版)
イザベラ・バード:著〈Isabella L.Bird〉
近藤 純夫:訳
夏の休日は、冷房を効かせた部屋で旅行記を読むのが、手軽な消夏方である。
今の世は、グーグル・マップという最強のオンライン地図があるので、内容の理解が深まって楽しい。
今回は、常夏の島に、つもり旅行。
実は、ハワイイには、池澤 夏樹氏の「ハワイイ紀行」という、現代日本人による優秀な旅行記が既に聳え立っており、生半可な内容では、かえって失望する結果になるか・・・
と半ば危惧するような気分で探し、見つけたのが、この本。
19世紀のイギリス女性が、訪れて記した旅行記
活火山火口まで切迫した迫力ある描写は、現場に立った者にしかできない現実感がある。
また、南海の楽園の明るい面と暗い面を単なる旅行者とは思えないような立場で描く。
爽やかな気候・恵まれた食物、一方、偶像崇拝・封建的社会構造。
前者は、現在でも同様に観光客を呼び寄せる。
後者は、19世紀初頭から始まったキリスト経の布教で、(一応)打破されているようではあるが、西洋文明の一方的な押し付けによる、地元旧来文化への迫害も見て取る。
もちろん、女性が単独で方々を安全に行動できた、ことは教化の成果ともいえるであろうが。
 
イギリス人は、チャールズ・ダーウィンにしろアルフレッド・ウォレスにしろ、男女を問わず、探検者気質傾向があるようだ。
自然科学の持つ好奇心と、宣教師が持つお節介心の合体した一種の世界進出は、何故進められたのであろうか。
現代の少数民族と言われている人々は、何故そのような他に進出するような気を持たなかったのか。
 
P335の「ハマグリ洞窟」は、訳しすぎであろう。
関連サイトを見ると、Clamshell Caveという固有名詞が見つかる。
「クラムシェル洞窟」で十分であろう。
 
も、ひとつ。思い出した本がある。
『青い地図 キャプテン・クックを追いかけて』
著者=トニー・ホルヴィッツ
訳者=山本光伸
ISBN:978-4-901784-31-3
クック船長の航路をトレースした、再訪ルポである。サンドイッチ諸島で最期の時を迎えた場面が印象的。