ハワイイ紀行【完全版】

著:池澤 夏樹
新潮文庫
ISBN:9784101318172
かつて、単行本の方を読んだことがあるが、なぜか、弊書評からは漏れている。
文庫版の方には、ミッドウェイとマウナケアの2章が追加され、さらに詳細な脚注も付されている
太平洋のほぼ中央に位置する島々においてポリネシア文化は何世代にも渡って継承されてきた。
そこに入り込んできた西洋人が、おせっかいにも本来の文化をないがしろ化してきた歴史がある。
筆者は、表層的なハワイとは一味違うハワイイを訪ねる。
文明化するということは、西洋側からの見地であって、それからは即座に理解できない文化は一方的に虐げられ蔑ろにされてきた。
それは人間だけではなく、自然の動植物においても同様の処遇をされ、現在になってやっとそれらに気づき始めている。
本書を知らず読まないままでいわゆる「ハワイ」に行くのと、一読後ハワイイに上陸することの差は大きいと思う。
またハワイイに行かずとも、身近にそのようなことが無いのかを考えるよすがも与えてくれる本である。
 
一点だけ気になったところ。
p95、注4で、
「イリオモテボタルと名付けられたこの種は、種として新しいだけでなく、もう一つ上の科のレベルでの発見だという。」
は、
「イリオモテボタルと名付けられたこの種は、種として新しいだけでなく、もう一つ上の属を更に上回る科のレベルでの発見だという。」
が正しい。