137億年の物語

―宇宙が始まってから今日までの全歴史-
著:クリストファー・ロイド
訳:野中 香方子
文藝春秋(2012/09発売)
ISBN 978-4163742007
科学と歴史を合体させた読み応えがある本。
本書を基本にして興味がある方面に展開すれば、更に知識を得ることができる。
単に、年代ごとの出来事を教科書的に記載するのではなく、各テーマ毎に歴史的事実の背景と影響を分かりやすく書いている。
例えば、「新大陸の農作物がヨーロッパを変えた」では、30年戦争終結後の1648年に締結された「ウェストファリア条約」後、ヨーロッパ諸国が宗教からのしがらみを脱した、ことが紹介されている。逆にそれまでは、大変制約が大きかったということで、中世がそこで終焉したと理解した。
歴史は、後世の判断に待つ、との原理がある。即ちどのようなことをどのような契機で決定したかという記録が残されることが必要だ。
公の決定に至った文書は、ある年月(例えば50年)後、遍く公開されることを要すると思う。
後世の人々が現在の我々の判断の是非を問う、という意識があれば、変な約束等を行えなくなると思う。
秘密にする理由は秘密で、しかも永久に非公開・・・だったらなんでもできてしまうではないか。
現在の状況は危うい。特定とは、全体とほぼ同義語である。
 
いくつか、おや?というところがあるので、記す。
・p124〜125
「人類の拡散」で、世界地図上に現生人類の拡散の様子を図示している。
そこでは、アフリカからシナイ半島を経由しているように描かれている。
この部分は、ティーヴン・オッペンハイマーの「人類の足跡10万年全史」では、
「紅海の南の端バーブ・エル・マンデブ「悲しみの門」から約8万5千年前にイエメン方面に移動した一団の子孫だけが、現生人類として現在地球上に展開した」
とあるので、現在でも定説はないということなのだろう。
・p264
ポリネシアの東西について、
ニューカレドニア、フィジーサモア、トンガを東側
ハワイ、ニュージーランドイースター島を西側
と記している。
これは、東西が逆ではなかろうか。
 
フランソワーズ・コワレ、読了。